事例紹介

列真株式会社事業内容:半導体・液晶レーザー検査装置の製造及び販売
従業員数:5名
所在地:東京都品川区東品川2-2-25サンウッド品川天王洲タワー3F

列真株式会社

開発品 LODAS-mini

道場参加の理由

技術以外に製品開発のノウハウが必要だった

列真の代表取締役である張 東勝氏は、2014年まで大手電機メーカーの電子回路エンジニアとして勤務。液晶パネルのガラス素材表面にある傷などを検査するレーザー検査装置の開発を手がけていた。

「既存のレーザー検査装置は大型で高価だったため、導入できるのは大手企業などに限られていました。また、厚みのあるガラス基板を検査するときは表と裏の双方に検査機を配置する必要がありましたし、基板内部が検査できず目視による検査が欠かせない点も課題だったのです。これらを解消した機器をつくることができれば、中小企業やベンチャー企業などにも導入していただける。そう考え、2015年に列真を創業しました」(張氏)

創業直後の列真は張氏1人だけの企業だった。張氏には高い技術力があり、つくりたい製品のイメージも固まっていたが、営業力や販路は持ち合わせていなかった。

「まずは自力で製品作りをしながら顧客開拓に取りかかったのですが、いろいろな企業にメールを送ってみても返事はゼロ。このままでは、製品が完成しても売る相手がいないと焦りました。会社員時代なら、営業やマーケティング、デザイン部門などの同僚に助けてもらえましたが、独立したらすべて自分でやらなければならないと痛感したのです」(張氏)

悩んでいる時、救いの手となったのがチャレンジ道場だった。張氏が助成金の情報を得ようと東京都中小企業振興公社のホームページを見たとき、道場の事業内容を偶然目にしたのだ。製品開発だけでなく、マーケティングやデザイン、販売といった一連の流れをすべて学べる点に魅力を感じ、2015年、張氏は道場に入門した。

代表取締役 張東勝氏

代表取締役 張東勝氏

道場での学び

特許申請や販売代理店との
契約締結でも支援を受けた

道場での学びは、決して楽ではなかったと張氏は振り返る。

「この種のセミナー・講座に参加した経験は、それまで一度もありませんでした。また、講座ごとに出される課題も簡単ではなく、最初の頃は『きついなあ』と感じていましたね。ただそれだけに、たくさんの事柄を吸収できたと思います。当時は製品開発以外の仕事はしていませんでしたから、勉強の時間をしっかり確保して道場に臨んでいました」(張氏)

張氏が道場でテーマに取り上げたのは、もちろんレーザー検査装置。従来製品より多少精度は落ちるが、安価で小さく、短時間で検査できる機器をつくることにした。こうすることで、中小企業や、研究予算の少ない研究開発部門でも導入でき、新たな市場を開拓できると考えたからだ。

道場参加中の2015年11月、張氏は「1回のレーザー照射で厚みのあるガラスの表・裏面と内部を測定可能な技術」で特許を申請。翌年には見事に取得を果たした。

「このときは、当社まで足を運んで特許取得へのアドバイスをしていただいたことが役立ちました。この特許は2017年の『発明大賞』で奨励賞に選出。競合との差別化を図る上で、本当に大きかったと思います」(張氏)

また、試作品がある程度完成し、他社から商談が持ちかけられるようになってからは、販売体制の構築や、販売代理店との契約締結などの面でも支援を受けたという。

「製品やサービスの価格はどうするか。顧客に対してどんなメンテナンスを行うか。代理店との役割分担者をどうするのか……。他社と契約する際には、そうした細かい部分まで事前に決めなくてはなりません。しかし公社から支援を受けられたため、なんとか契約書をまとめることができました」(張氏)

得られた知見

BtoB製品にも
デザインが大切だと知った

道場で師範などから厳しく指摘されていたのは、装置のデザインだ。張氏にはデザインの知識がなかったため、初期の試作品は無骨な外見だったという。

「はじめは、『殺風景な工場や研究室で使われるのに、どうしてそんなにデザインを気にしなければならないのだろう』と思っていました。でも後年、実際に工場を見たとき、デザインに工夫を凝らした当社の製品は大きな存在感を放っていたのです。人は見た目の印象に大きく左右されますから、良いデザインにして工場で働く人々に注目してもらうのは必要だったと理解できました」(張氏)

張氏は開発した製品に、「レーザー式卓上型パーティクル検査装置 LODAS-mini」という名前をつけた。

当初の重量は150kg程度だったのですが、道場で紹介された専門家の方に助けていただき、60kg程度まで軽量化。工場にはぎっしりと設備が並んでいるので、大きな機器だと入りません。小型化に成功したことで導入してもらえる可能性は高まりました。また、他の専門家の支援も受け、デザイン・ソフトウエアの面でも改善を繰り返したのです」(張氏)

レーザー式卓上型パーティクル検査装置 初号機

レーザー式卓上型パーティクル検査装置 初号機

小型軽量化、デザイン、ソフトウェア改善後の現在の検査装置

小型軽量化、デザイン、
ソフトウェア改善後の現在の検査装置

会社はどう変わった?

必要な知識を一通り学び
独力で新製品を作れるように

LODAS-miniの販路を拡大する上で最も有効だったのは、展示会だった。張氏は国内外の展示会に試作品を出展。単独出展だけでなく、道場参加企業として事業化チャレンジ道場のブースで共同出展をしたこともあった。

「最初は資金がなかったので、自分でトラックを運転し、重い機器を展示会場に運び込みました。荷台に上げるとき、試作品を載せていた木の台が割れて肝を冷やしたこともあります(笑)。お客さまへの説明も、当然、自力でやりました」(張氏)

業界関係者が集まる専門展示会では、大きな反応が得られた。2017年にはある企業に試作品を貸し出すことになり、後に正式導入が決まった。試作品貸出の話が決まったのは、まだ道場に参加していた頃。張氏が報告すると、道場のプロジェクトマネージャーは大喜びしたという。

張氏は現在、導入先企業から得たフィードバックをもとにさらに改善を加え、より顧客のニーズに対応した検査装置を作っている最中。また、検査の多くの部分を自動化し、効率よく検査を行うことが可能な新機種の開発にも取り組んでいる。売り上げの増加に伴い、社員数も5人に増やした。

SWOT分析などを使って自社の強みを見極められるようになったこと。展示会に出て販路を広げること。ものづくりには技術だけでなく、デザインも重要であること。どれも、道場に参加しなければわかりませんでした。まだまだ発展途上ですが、道場で学んだことを生かし、今後も頑張っていきたいです」(張氏)

展示会での思い出のパネル

展示会での思い出のパネル

取材後記

張社長は、製品のデザインについて当初は重要視していませんでしたが、事業化チャレンジ道場に参加し、顧客目線で製品を作る中で、デザインの重要性に気付くようになりました。同社は、道場修了後、社員数も拡大し、新機種の開発にも取り組むなど、ますます今後の成長が見込まれます。「新製品はすぐにヒットしない。3~5年の発酵期間が必要。その後長く続く製品となる。」という張社長のお話が印象的でした。(2020年9月取材)

文章/白谷 輝英
撮影/平山 諭

会社概要

参加者名 代表取締役 張 東勝氏
経営者の参加あり
資本金980万円
TEL03-6451-4379
FAX03-6451-4469
URLhttp://lazin.jp/