事例紹介

大成樹脂工業株式会社事業内容:プラスチック製品の製造
従業員数:60名
所在地:東京都文京区千石4-21-1

大成樹脂工業株式会社

開発品 IROHA

道場参加の理由

意識改革の加速に自社製品の
開発が必要だった

大成樹脂工業は、プラスチック製品の製造を手がけるメーカーだ。2001年、現代表取締役 松岡良彦氏が後継者として入社した当時、工場内には、受け身体質が蔓延していたという。

「ワンマン社長だったわたしの父が、高齢のため工場の現場に顔を出さなくなったことが原因で、工場内の風紀や規律すら、乱れている状態でした。また仕事に対しても、現場社員は受け身の姿勢で、例えば低品質な製品ができあがったときも『だって、こうなるんだよ。仕方ないだろう』と改善の知恵も出さずに開き直る始末でした」(松岡氏)

そのため2001年より、大幅な体質改善に大改革を推し進めたが、当時は下請けの仕事が中心であったため、「言われたことだけをやればいい」受け身体質からは、なかなか抜け出せなかった。

「そんな時、開発道場の募集チラシを偶然目にした宮崎社員(仁芳氏 現開発部次長)から参加の申し出があり、『自社製品を作れるようになれば、社員達に会社への誇りと愛情が生まれて、積極性や自主性が芽生えるかも知れない!そうすれば、当社はさらに飛躍できるだろう』と考え、すぐに参加を決めたのです」(松岡氏)

代表取締役 松岡良彦氏

代表取締役 松岡良彦氏

作った製品

講座に向けた準備には
3日を費やす

宮崎氏は2012年から、2人の同僚とともに道場に参加。2週間に1度のペースで行われていた講義は、それなりに負担感があったと宮崎氏は振り返る。

セミナーではなく『道場』と銘打たれているだけあって、厳しさはありましたね。準備不足で参加した他社の受講生が、講師から厳しい意見を言われるのを目撃したこともあります。私は自分から希望して参加したため、結果を出そうと、1回の講座に平均で3日くらいかけて準備をしていました」(宮崎氏)

道場で取り組んだ商品は、お盆の上に置いても滑りにくく、底とお椀の縁の形状に工夫を凝らして、食べものを掬いやすくした自立支援食器「IROHA」
機能的であるだけでなく、会津塗りをほどこすなどして五感で食事を楽しめるようにした。

「製品コンセプトを決める講義の中で、家族に被介護者がいる同僚から介護用食器の話題がでました。彼の家族は従来の食器に対し、『食器が重い』『落とすと割れてしまうし掬いにくくて食べづらい』『食器の色が冷たくて楽しくない』などの不満をこぼしていたそうです。そこから具体的なイメージを固め、当社ならではの自立支援食器を作ろうと決めました」(宮崎氏)

お盆の上に置いても滑りにくい

お盆の上に置いても滑りにくい

食べ物が掬いやすい

食べ物が掬いやすい

得られた知見

「利用者視点」を初めて意識。
同期の存在も大きかった

大成樹脂工業は、IROHAの試作品を2014年の「国際福祉機器展」に出展。この際ブースでモニターを募り、応募のあったデイケア施設等で高齢者を対象にモニター調査も行った。そこで、意外な欠点に気づいたという

「高齢者施設では大量の食器を洗うため、食器洗浄機がよく使われています。ところが、試作品を洗浄機で洗ってもらうと、塗装がすぐに剥がれてしまったのです。それまで『塗装が乗りやすいかどうか』については考えていたのですが、利用者がどんな運用をするかまでは考えが及びませんでした。このとき初めて、エンドユーザーの生の声を意識しましたね」(宮崎氏)

宮崎氏たちは塗装業者を変えようと2社から見積もりをとったが、金額はあまりに高価だった。手詰まりになりかけたが、道場の同期受講者に相談したところ、その企業の系列会社に合成漆器メーカーがあるという情報を得た。

「その会社に依頼したところ、当初の見積もりよりはるかに安い金額で受けていただけました。しかも、品質もずっと上。おかげで、製品化に大きく近づくことができました。道場の同期とは、今でも付き合いのある人がたくさんいます。私にとっても当社にとっても、貴重な人脈です」(宮崎氏)

五感で楽しむ自立支援食器「IROHA」

五感で楽しむ自立支援食器「IROHA」

会社はどう変わった?

社員が「どうしたら会社をよくできるか」
と考えるように

IROHAの製品化にあたり、大成樹脂工業は新ブランド「Liver U」(リーベルユー。「あなたを自由に」という意味)を立ち上げた。

「道場の素晴らしい点はいくつもありますが、その1つが、製品作りだけで終わらないことでした。『世の中の不便を便利にする』というコンセプトをまとめ、新たなブランドを生み出すまで導いていただいたのです。今後は食器以外にもいろいろな商品を構想中です」(宮崎氏)

道場に参加して自社製品を持ったことは、大成樹脂工業の意識改革に大きく寄与したという。松岡氏や宮崎氏が入社した当時に比べ、社員の自主性・積極性は飛躍的に高まった

「IROHAという自社製品を持ち、さらに多くの人から愛用されているのを目の当たりにしたことで、社員たちは自社に誇りと愛情を持てるようになりました。その結果、業務に関する新提案も様々出るようになりましたし、進んで社内を整頓するようにもなりました。『どうしたら会社を良くできるか』という発想が多くの社員に生まれたのは、道場に参加したおかげだと感じています」(松岡氏)

挑戦と変革の精神

挑戦と変革の精神

社員が「どうしたら会社をよくできるか」と考えるように
取材後記

「あるとき工場に出向いてみると玄関先に、指示していないのに『自社製品』としてIROHAが飾られているのをみて衝撃を受けた。社員が自主的に飾ったのだろう。」と嬉しそうに語った松岡社長と宮崎氏。「自社製品を持つこと」が社員の誇りや自信になっている様子がひしひしと伝わってきました。その結果、社員が主体性を発揮することこそ大成樹脂工業の「挑戦と変革の精神」の源泉なのでしょう。(2020年9月取材)

文章/白谷 輝英
撮影/平山 諭

IROHAの使い方イメージ

会社概要

参加者名 開発部次長 宮崎仁芳氏
技術顧問 関根正明氏
生産技術グループ担当主任 中島宣総氏
経営者の参加なし
資本金3600万円
TEL03-3942-1411
FAX03-3944-7762
URLhttp://www.web-taisei.com/