事例紹介

昭和機器計装株式会社事業内容:工業用流量計・液面計の製造・販売
従業員数:20名
所在地:東京都大田区東糀谷6-4-17

昭和機器計装株式会社

開発品 小型流量計

道場参加の理由

業績を立て直すため
約15年ぶりに新製品をつくりたかった

昭和機器計装は1962年の創業以来、水や空気などがどの程度流れているのか測る「流量計」を設計・製造・販売している企業だ。主力製品は、製鉄所をはじめとする各種工場、上下水関連施設、海運・造船産業などで使われる「フラッパー式流量計」。「渦式流量計」などに比べ、高温や振動、結露といった過酷な環境に耐え、メンテナンスの頻度が小さくて済む強みがある。

しかし、2014年に大口の取引先からの注文が途絶えたことで売上は減少。そんなとき、代表取締役に就任したのが篠原利彦氏だった。

当社を成長させるには、売り上げの大黒柱だった大型流量計に代わる製品が必要でした。ところがその頃の当社は、15年くらい新製品を出せていなかったのです。取引先に出向いた営業担当者が『何か新しい話題はないの?』と聞かれると、言葉に詰まってしまうのが常でした」(篠原氏)

自分たちだけで、果たして新製品開発が進められるのか。不安に感じていたとき、篠原氏は偶然、チャレンジ道場のチラシを見かけた。

「道場を利用すれば、開発経験に乏しい当社でも新製品開発に取り組めるのではないかと考え、社内の空気を変えようとして参加を決意しました」(篠原氏)

代表取締役 篠原利彦氏

代表取締役 篠原利彦氏

道場での学び

顧客から何度も聞き取りを行い
試作品の完成度を高めた

道場で手がけたのは、大型流量計のノウハウが生かせる小型流量計。参加メンバーは篠原氏の他、技術部門2人、営業部門2人の合計5人とした。

「営業担当者をメンバーに加えたのは、お客さまの声を開発に取り入れることが大切だと思ったからです。また、従来の営業には『既存製品をただ売るだけ』という傾向があったのですが、ものづくりに深く関わることで、お客さまのニーズを引き出す能力を磨いてほしいという期待もありました」(篠原氏)

最初の頃は自分たちだけで試作・改良していたが、満足のいく製品はなかなか作れなかった。そうしたなか、途中から意識するようになったのが「顧客の元に足を運んで試作品への意見を聞く」ということだった。

「初期の試作品をお客さまであるメーカーに持ち込んだところ、値段が高すぎると指摘されました。そこで、金属製だった筐体を樹脂製に変更し、コストダウンを図ったのです。また、当初は目視だけで流量を読み取る仕組みだったのですが、『流量計の場所までいちいち出向くのでは業務効率が悪い』と言われました。そこで信号の出力機能を追加し、流量計から離れた場所でも計測できるように改良。ヒアリングと改良を繰り返して完成度を高めたことは、とても良かったですね」(篠原氏)

道場終了までにつくった試作品は、全部で78バージョン。その後もさらに改良を続け、試作品は100バージョンを超えた。こうして徐々に製品化へと近づいていった。

開発メンバー集合!

開発メンバー集合!

開発道場修了時の試作品

開発道場修了時の試作品

得られた知見

競争力のある製品が、
顧客ニーズを引き出す突破口になると知った

手応えを感じ始めたのは道場参加から1年半ほど過ぎた時期だと、営業部課長の篠田 勤氏は振り返る。コストダウンの成功や信号出力機能の追加により競合製品と戦えるようになったことで、顧客からの反応はがらりと変わった。

「もともと当社の流量計には、ゴミなどが詰まる危険性が小さくメンテナンスが楽なのです。一方、価格や機能、サイズなどの面で他社と互角の試作品ができたことで、お客さまの興味はがぜん高まりました。すると、具体的な悩みや業務上の課題をお話しいただけるようになり、営業はずっとやりやすくなりました」(篠田氏)

試作品のヒアリングを通じて学べたことは、他にもあったと篠田氏。
「お客さまとのやりとりを通じ、既存製品への評価や自社への期待などをたくさん聞くことができました。それで自社の強みや特徴が再認識できたことは、他社に営業をする際に参考になりましたね」(篠田氏)

展示会出展の様子

展示会出展の様子

会社はどう変わった?

営業と技術部門の連携力が上がり、
社内に一体感が生まれた

小型流量計は現在、最後のブラッシュアップに取りかかっている段階。2021年初頭には製品化が完了し、販売を開始する予定だ。

製品化までの道のりは、決して平坦ではありませんでした。独力で挑戦していたら、おそらく挫折していたでしょう。でも、道場に参加し、師範などが『伴走者』として常に励ましてくれたから、諦めずに取り組むことができたと感じます」(篠原氏)

道場参加から間もないこともあり、今現在社風が劇的に変わったとはまだ言えない。ただ、営業部門と技術部門の距離が縮まったことは確かだという。

「営業部門と技術部門が協力し、新製品開発という目標に向かって一丸となることができました。中小企業なので昔から技術部門との距離は近かったのですが、道場でチームを組んだことで、より『言いたいことが言える関係』になれたと思います。また、ヒアリングしたご要望をいち早く試作品に反映するスピード感も、道場によって身についたかもしれません」(篠田氏)

新製品開発のサイクルを回したことで、社内には自信も生まれた。また、製品開発の手法を学ぶとともに、製品開発の中で他のメーカーと打合せの機会も増え、顧客が広がった。

「開発途中で迷いやつまずきがあっても、師範や専門家の皆さんがフォローしてくれたのがうれしかったですね。今後は今回の経験を生かし、自社の強みを発揮でき価格競争にも巻き込まれない新分野で、別の製品開発をしようと考えています」(篠原氏)

開発ミーティングの様子

開発ミーティングの様子

取材後記

「顧客から何か新しい話題はないの?」と言われ、新製品を作りたかったということで事業化チャレンジ道場に参加された同社ですが、顧客のニーズに対応した製品開発を行うために100を超える試作品を作るという努力を開発チームで重ねられたというお話に感銘を受けました。あきらめずに何としてでも製品にするという篠原社長をはじめとする開発担当者の強い思いを感じた取材でした。(2020年9月取材)

文章/白谷 輝英
撮影/平山 諭

会社概要

参加者名 代表取締役 篠原利彦氏
相談役 中山 諭氏
技術課 重田 創氏
営業部課長 篠田 勉氏
営業部 清田祐治氏
経営者の参加あり
資本金2400万円
TEL03-3745-3361
FAX03-3745-3395
URLhttps://www.showa-kk.com/