事例紹介

株式会社サトーゴーセー事業内容:プラスチック製品の成形や加工
従業員数:89名
所在地:東京都板橋区東新町1-17-1

開発品 プラスバンド

開発品 プラスバンド

道場参加の理由

自社製品開発力と
若手の教育機会を求めていた

サトーゴーセーは、プラスチック製品の成形や加工を手がけるメーカー。得意としているのは、電子機器・電気設備をはじめとする幅広い場面で使われる「結束バンド」だ。

チャレンジ道場に参加したのは、2016年のこと。かねてから自社製品の開発力を身につけたいと考えていた代表取締役の佐藤 昭氏が、道場のパンフレットを目にしたのがきっかけだった。

道場に参加した営業グループ 東京・特販チームの鵜飼 隆氏はこう振り返る。

「当時の私は入社1~2年目で、先輩たちに比べると担当顧客が少なく時間的な余裕がありました。また、若手社員に刺激を与える意味合いもあったのだと思います。営業の私と、生産部門・金型部門からそれぞれ1人ずつ、合計3人の若手が選抜されて道場に参加することになりました」(鵜飼氏)

開発商品「プラスバンド」

開発商品「プラスバンド」

自社の強み

デザイン・インストラクターの助言で
製品コンセプトが明確に

道場に参加してからしばらくは、迷走状態が続いていた。虫除け効果がある野菜・植物用の添え木、ペット用の塔婆などたくさんのテーマ案を考えたが、どれも決定力に欠けていたという。そうした中、プロダクトデザイナーの三好耕平氏が、デザイン・インストラクター(※)としてチームに参加。第3者のデザイナーがチームに加わることで、客観的な視点とユーザー視点が一層充実し、プロジェクトは加速したという。

「私が入った頃のチームは、開発テーマを決めるのに精一杯な状態でした。そこで、チームの皆さんが楽しみながら、目的ややりがいをもって取り組めるようなアイデアを出したらとアドバイスしたのです」(三好氏)

鵜飼氏たちは三好氏も交えてディスカッションを重ね、サトーゴーセーの原点である「むすぶテクノロジー」に立ち返った。そして生まれたのが、「暮らしを楽しむための屋内用結束バンド」というコンセプトだった。

「通常の結束バンドは、バンドの先端を穴に通して結ぶ構造になっているため、バンドの先端には何もつけられません。しかし、新製品ではバンド部分を横からスライドさせて挿入する仕組みを採用することで、バンドの先端にクリップなどプラスアルファの用途を追加できるようになったのです」(鵜飼氏)

※デザイン・インストラクターとは?
売れる製品開発道場の原理モデルを製作するフェーズで、各社1名配属になるプロダクトデザイナーのことを言う。ユーザー視点からのアドバイスを行う。

デザインインストラクター 三好耕平氏

デザイン・インストラクター 三好耕平氏

開発ミーティングの様子

開発ミーティングの様子

作った製品

デザイン性が高く、
繰り返し利用可能な家庭用結束バンド

最終的に完成した製品は、「+(プラス)バンド」と名付けた。従来型結束バンドの課題を解消し、「片手で簡単に着脱可能」「何度も繰り返し使える」「先端にプラスアルファの用途がついている」などの特徴が加えられている。色もカラフルで、家庭でよく使うモノや空間からこぼれてしまいそうなモノを、楽しく整理することが可能になった。

製品化に際しては、社内から幅広く意見を募って参考にした。

「従来の結束バンドは、工具箱にしまわれ、機械の中で使われる存在でした。一方、プラスバンドは暮らしの中で使う製品です。そこで、社内で多くの人に触ってもらい、感想や改善案を募ったのです」(鵜飼氏)

道場の2年目からは、業務グループ執行役員 財務担当の佐藤亮太氏がチームに参加。これにより、製品化への動きは加速した。

「ギフトショーなど規模の大きな展示会に出展するには、100万円単位の費用がかかります。当初のメンバーだけでは、短期間でこうした展示会出展の稟議決裁や製品を拡販することはできなかったでしょう。佐藤執行役員が参加したことで、事業化までの日程は大幅に短縮できたのではないかと思います」(鵜飼氏)

3つの使い方ができるプラスバンド

3つの使い方ができるプラスバンド

得られた知見

全社が開発への意識を持った。
採用活動にもプラスが

道場参加中の2017年10月、サトーゴーセーはプラスバンドを「いたばし産業見本市」に出展。さらに、ギフトショーなどの展示会にも次々と参加した。バイヤーなどからの反応は上々で、チームメンバーは「これは売れるかもしれない」と自信を持ったという。そして2018年5月には大手生活雑貨店への売り込みがきっかけで、テスト販売がスタート。同年秋には社内でコンペを行い、プラスバンド第二弾のアイデアを募った。

「このときは、工場のパート従業員からも応募がありました。部署や役職の垣根を越えて、全社が開発への意識を持てたのです。また、自分たちがアイデアを出した製品が大手生活雑貨店で売られていることは、社員の大きな励みになっていますね。
また、プラスバンドの存在は、採用活動にも役立っています。

当社のホームページにはプラスバンドの開発秘話なども掲載しているのですが、ここ数年の応募者はそのページを読み、『サトーゴーセーに入って製品開発をしてみたい』と意気込んで来る人が多い印象です。自社で新製品づくりにチャレンジできる環境があることは、若い人にとって魅力なのでしょう」(佐藤氏)

生活のお困りごとを解決するプラスバンド

生活のお困りごとを解決するプラスバンド

会社はどう変わった?

製造業の仕組みや
他部署との連携のやり方を学べた

道場参加当時の鵜飼氏と佐藤氏は、どちらも入社から間もない時期だった。道場に入って製造業の基礎を学べたことは貴重な経験だったと、2人は口をそろえる。

「前職は金融業界で、道場参加当時は『金型って何?』という状況でした。しかし道場に参加し生産部門、金型部門のメンバーと協働したことで、金型や生産の現場がどう動いているのか学べたと思います。初心者としては、非常にありがたい経験でしたね」(佐藤氏)

「営業職として働いていると、生産部門や金型部門の同僚の仕事ぶりをつぶさに見ることはできません。しかし、道場でチームを組んで一緒に試作品づくりを進めることで、彼らの仕事内容や、その際に考えていることがよくわかりました」(鵜飼氏)

全社を巻き込んで開発を進めることの重要性も、道場での学びを通じて知った。

「一部の部署・社員が頑張っているだけでは、プラスバンドを世に送り出すことはできませんでした。このプロジェクトを通じて、会社全体を巻き込み、新製品開発に取り組む雰囲気作りをすることも重要なのだと学びました。」(佐藤氏)

開発メンバー

開発メンバー

取材後記

今回の取材にあたり、参加当時のデザイン・インストラクターである三好さんにもご協力頂きました。チームが揃ったとき、思い出話に花が咲き、このチームワークでこそ結ぶ「楽しさ」を深掘りすることができたのだろうと実感しました。取材中、最も印象的だったのは鵜飼さんの「自分の子どもに伝えたくなるような製品開発をしたい」という言葉です。開発担当者の熱い思いと、当社の強みである「結束」力で生まれた製品。今後も当社の飛躍を楽しみにしています。(2020年9月取材)

文章/白谷 輝英
撮影/平山 諭

プラスバンドの使い方

会社概要

参加者名 業務グループ執行役員 財務担当 佐藤亮太氏
営業グループ 東京・特販チーム 鵜飼 隆氏
東松山営業所 生産グループ生産チーム チームマネージャー 加藤幸成氏
経営者の参加なし
資本金8800万円
TEL03-3955-4066
FAX03-3959-5481
URLhttp://www.sato-gosei.co.jp/