事例紹介

株式会社東京商工社事業内容:水回りを中心とした住宅設備機器や生活雑貨を中心に取扱う専門商社
従業員数:45名
所在地:東京都大田区南蒲田2-27-1

新商品 東京まくら「禁務時間」

新商品 東京まくら「禁務時間」

道場参加の理由

卸売業を進化させる
「2本目の事業の柱」がほしかった

東京商工社は、水回りを中心とした住宅設備機器や生活雑貨を中心に取り扱っている専門商社。チャレンジ道場に参加したのは2014年のことだった。代表取締役を務める草野隆司氏は当時、インターネットや物流の進化によってメーカーと小売店、消費者が直接つながる「中抜き」が進み、卸売業が先細りになる危険性を感じていたという。

将来に備え、卸売業を進化させ、新たな収益源を育てることが必要でした。また、自社のオリジナル製品があれば、新規小売店を開拓する際にも役立ちます。そこでものづくり分野に進出したいと考えていたところに公社の『事業化チャレンジ道場』の存在を知り、これはと思って応募しました」(草野氏)

開発製品「Sururu」のパッケージ

開発製品「Sururu」のパッケージ

自社の強み

「商社だから作れる製品がある」
とわかり自信に

東京商工社にとって強みの1つは、長年にわたって築いてきた取引先との関係性だ。草野氏とともにチャレンジ道場に参加した企画室室長代理の小野 順氏は、当時をこう振り返る。

道場の師範から『小売店やメーカーと距離が近い点は、ものづくりにとって有利』と指摘され、まさに目から鱗が落ちる思いでした。小売店を通じて得られる消費者のリアルな要望は、商品を作る上で欠かせません。また、当社はさまざまなメーカーとも取引がありますから、各企業の優れたやり方を取り入れたり、適切な企業とコラボしたりすることも可能です。『メーカーではない我々だからこそ、作れる製品がある』とわかったのは、自信になりました」(小野氏)

ポータブルお茶ミル「Sururu」

ポータブルお茶ミル「Sururu」

作った製品

茶葉をひいて粉末茶にできる
ポータブルお茶ミル「Sururu」

チャレンジ道場で取り組んだ製品は、緑茶などの茶葉を入れ、その場でハンドルを回して粉末茶にできるポータブルお茶ミルの「Sururu(するる)」。

持ち運びが簡単で、どこでもひきたての粉末茶を楽しめるのが最大の特長で、2017年2月、有名雑貨専門店や大手百貨店などの店舗、通販カタログなどで販売を開始した。

「当初のターゲットは働く女性でしたが、実際に購入いただいたのはシニア層が中心でした。また、海外バイヤーの評判が良かったのも意外でしたね。そこで公社の『海外販路開拓支援事業』などを利用し、台湾やシンガポールの店舗でも販売を開始。商社である私たちがはじめてものづくりに挑戦したことで、商品開発のやり方や海外展開のノウハウなど、本当に多くのことを学ぶことができ、ビジネスに関する視野も少し広くなったような気がします」(小野氏)

持ち運べてどこでも茶葉をひける

持ち運べてどこでも茶葉をひける

得られた知見

経営者自らがものづくりに関わり、
支援することが大切

チャレンジ道場で学んだ知識を生かし、次に取り組んだのが「枕」だった。東京商工社では以前から安眠関連グッズを取り扱っていたのだが、いくつかを自社開発することで魅力あるシリーズ商品に育てようとした。

「Sururuのような単品商品の場合、商品寿命はどうしても短くなりがちです。でも、安眠という切り口で枕など多彩な商品を開発できれば、ブランド化ができ、長期にわたって大きな売り上げが期待できるのではないかと考えました。なお、ブランドのターゲットは男性。男性向けの安眠・癒やしグッズ市場なら競合が少ないと考えたからです」(小野氏)

経営層が新製品開発プロジェクトに関わり、積極的に支援したりすることが重要だと、草野氏は強調する。

ものづくり未経験の企業が新製品づくりに取り組む場合、新製品開発部門と既存部門との間にあつれきが生まれがちです。小野も、営業部門を巻き込む際に苦労していたようでした。だから、もし経営陣の支援が不十分だったら、プロジェクトがとん挫する危険性はかなり大きいのではないかと思います。その点当社は、経営者である私自身がチャレンジ道場に参加していたので、新たな一歩を踏み出す決断もしやすく、会社全体の体質を変えるきっかけをつくれたのかもしれません」(草野氏)

草野社長と企画室の小野氏

草野社長と企画室の小野氏

会社はどう変わった?

学んだノウハウを応用して
サービス業にも進出

発売から3年がたった「Sururu」はギフトショーへの出品などを通じて国内市場のみならず、海外にも販路を広げている。また枕シリーズでは、2020年に新商品「東京まくら『禁務時間』が発売。「TOKYO MAKURA」のブランドは、東京商工社の睡眠ケアブランドの中心として、今後育てていきたいと考えている。

「企画立案や自社の強みの発見、市場分析などに使っているツールは、すべてチャレンジ道場で学んだもの。道場で取り組んできたことが、そのままビジネスに役立っています」(小野氏)

さらに東京商工社では、高齢者・障がい者向け住宅改修・福祉用具販売事業の「ココ・ラ・ス」も始めた。ものづくりだけでなく、サービス業にも乗り出したのだ。

『チャレンジ道場に参加して、社内が劇的に変わった』とまでは言えません。でも、新たなビジネスに取り組もうとする風土は、着実に育ちつつあると思います。今後は、私と小野がチャレンジ道場で学んだこと、いわば『新ビジネスづくりの共通言語』を、さらに社内に浸透させていきたいですね」(草野氏)

住宅改修・福祉用具販売事業の「ココ・ラ・ス」

住宅改修・福祉用具販売事業の「ココ・ラ・ス」

取材後記

事業化チャレンジ道場の参加は草野社長と小野氏のお二人での取組でしたが、次の枕の製品開発や住宅改修・福祉用具販売事業への展開の際には営業部門を巻き込むなど、社内全体での取組に広げられていました。経営層が新製品開発プロジェクトに関わり支援することが重要だと草野社長がおっしゃっていたのが印象的でした。(2020年8月取材)

文章/白谷 輝英
撮影/平山 諭

会社概要

参加者名 代表取締役社長 草野隆司氏
企画室室長代理 小野 順氏
経営者の参加あり
資本金3000万円
TEL03-3739-8080
FAX03-3739-8860
URLhttp://www.to-sho.co.jp