事例紹介

庄司電気株式会社事業内容:工業用プラスチック精密部品及びプラスチック成形用金型の製造・販売
従業員数:150名(海外含む)
所在地:〒142-0043 東京都品川区二葉2-17-2

道場参加の理由

事業の高付加価値化と組織活性化、2つの課題を達成するために道場参加を決意

同社は、IoT・IT関連機器、家電、自動車部品などの精密プラスチック部品の加工製造等を行っており、強みは自社内で金型から設計し、100分の1ミリ単位での精密加工を可能とする技術力。ただし、道場入門にあたっては、2つの課題があったという。

「1つは『事業の高付加価値化』です。弊社は、樹脂成形加工を主とした製造業ですが、社内で金型を設計し一貫生産体制を持ち、高精度の成形技術力があっても、なかなか高付加価値に結びつかないことに、ずっとジレンマを感じていました。その一方で多品種少量生産等が進み、製造ロット数は減ってきています。薄利多売であったのが、薄利は変わらず多売が減りつつある状況に危機感を感じていました。」(庄司社長)

もう1点の課題は“組織の活性化”だという。「社員はみんな真面目で、要求された品質の製品を、納期を守ってきっちり作ります。その反面、いわれたことだけをこなしていればいいという受け身の体質が作られやすく、どうしても受動的、消極的な組織文化が根強くなってしまう。しかし、高付加価値の事業を目指すのであれば、たとえ下請け業務であったとしても、顧客に対して『それはもっとこうしたほうが良くなる』『こういう製品を開発してはどうか』といった提案をするなど、能動的、前向きに価値を生み出していこうという気風がなければならないはずです。そういう組織作り、文化作りが課題であることは、以前から強く感じていました。」(庄司社長)

そんな時、たまたま事業化チャレンジ道場の参加経験者が話すセミナーに参加し、そこで、道場で新事業開発ができたうえに、そのプロセスを通じて人材、組織の活性化もできたという話があったという。「『これだ!』と思って、すぐに申し込みました。」(庄司社長)

代表取締役 庄司義人 氏
作った製品

ワンちゃんの健康的な食事をサポートするヘルスケア食器

La La Dishは、「正しい姿勢」と「早食い防止」で、ワンちゃんの健康的な食事をサポートするヘルスケア食器。

主な特徴

▼正しい姿勢で食事ができる8段階の高さ調整機能 ワンちゃんの正しい食事姿勢は、背中が床とおおむね平行になっている状態です。La La Dishは8段階の高さ調整機能により、ワンちゃんの成長や体調に合わせた正しい食事姿勢をサポートします。

▼早食いを防止するスローフード機能 ワンちゃんの食事でよくある問題が「早食い」です。早食いは、嘔吐や肥満、また、窒息、誤嚥性肺炎、胃拡張などの病気の原因となることがある危険な状態です。La La Dishは、食事皿にあえて食べにくくする凸凹を設けて早食いを防止しています。

▼スローフードの効果が持続するフィーダー回転機構 賢いワンちゃんは、何度か食べているうちにスローフィーダーに慣れて早食いに戻ってしまいます。そこで、La La Dishは、食事皿を4分割して、4種類の異なる形状の凹凸部分を設けています。食事皿を回転させて異なる位置にフードを盛ることで、ワンちゃんの慣れを防ぎます。

▼お手入れが楽で環境にも配慮した耐熱性素材を使用 La La Dishの本体は、耐熱性プラスチックで、電子レンジや食洗機の使用にも対応しています。特殊コーティングによりフードの汚れが付着しにくいので、お手入れも簡単です。また、陶器と異なり落としても割れません。さらに、本体素材は紙由来のバイオプラスチック。環境負荷が低く、不要になったときは可燃ゴミとして処分できます。

La La Dish La La Dish La La Dish
道場での学び

道場を通じて「場と機会を与えれば、社員は必ず成長する」ことを痛感

事業化チャレンジ道場の1年目は「売れる製品開発道場」での講義・演習が中心となる。冒頭から、PEST、SWOTなどの外部環境と自社分析から始まる。「これらはいわば“経営者目線”での分析ですよね。受講前は、正直、社員たちには荷が重いかもしれないと予想していました。出される宿題も『最後は、自分でやるか』と思っていた」という。

しかし、蓋を開けてみると、「社員たちのほうが、むしろ私よりも熱心に取り組み、宿題とされた分析などもしっかりとできていたのです。これは驚きましたし、嬉しい誤算でした。」
「結局、社員たちが受け身だとか積極性がないと思っていたのは、私が経営者としてそういう場を与えていなかったからなんですね。きちんとした場やチャンスを与えれば、みんなしっかり応えて、成長してくれるんだということに気づいて、猛烈に反省しました。」(庄司社長)
この気づきを得られただけでも、道場に参加した意義はあったという。

打ち合わせ写真 1
得られた知見

二年目からの事業化実践道場では、具体的な顧客像をしっかり見定めることが大事になる。

これには事業化実践道場から参加することとなった新入社員が、大きな役割を果たす。宮城県の工場近くのペット専門学校に話を持ち込んで、モニターになってもらい、実際に多くの犬たちの反応を確かめ、同時に犬の世話をする人たちの意見を得たことで、特許取得にもつながる回転機構などのアイディアを製品に盛り込むことができたという。「この取り組みが転機となり、開発が大きく進んだ。実際に使うユーザーの声を幅広く集めることの重要性を実感しました。」(庄司社長)

また同社内には、3Dプリンタ出力環境があり設計ができる社員もいるため、試作品制作はやりやすい環境にあった。結局、30以上の試作品を実際に製造したという。ただ、その過程で痛感したのが、“デザインの重要性”だという。「恥ずかしながら、私は“デザイン”というのは、単に『見栄えのいいものを作る』といったものだと捉えていたのですが、まったく違いました。製品の開発コンセプトを、マーケティングまで見据えて具現化することがデザインなのだということを、デザイナーさんとのやり取りの中で教えられました。」(庄司社長)

技術部の社員とデザイナーとの間で、ああでもないこうでもないと、多くのやり取りがあり、これは技術部の社員たちにとっても、今後のもの作りに活かせる大きな学びになったという。

打ち合わせ写真 2
今後の戦略は?

自社で価格を決定できるBtoC商品を開発し、販売までこぎつけることができたというのは、同社にとっては非常に大きな成果だといえる。いまは「La La Dish」をどのように拡販していくのか展開を検討中だが、もちろんこの製品単発で終わらせるつもりはない。いずれは関連商品や新製品も開発し、BtoC領域を、会社の第2の柱として育成すべく数値目標も含めた中期計画を立てている

「この成果は、決してBtoCの領域だけにとどまるものではないと考えています。どうすればお客様に喜ばれる商品を自ら開発し、製造することができるのかを考え続けた経験は、既存のBtoB事業にも還元できるもの。BtoB領域においても、既存のお客様に対して、よりよい製品を提案し開発していく、開発型製造業の基盤を作ることができたと思います。」(庄司社長)

社員が一丸となって1つの素晴らしい製品を作り、世に送り出したという経験は、必ず今後の会社の発展、ひいては同社の目標であるお客様の「笑顔創造」に資するものになっていくだろう。(2023年2月取材)

執筆協力/椎原よしき
撮影/株式会社アイフィス

会社概要

参加者名 代表取締役 庄司義人 氏
営業部 渡辺進夫 氏
技術部 辻圭吾 氏
技術部 村上聡 氏
経営者の参加あり
資本金5,000万円
TEL03-5498-2161
FAX03-3788-2057
URL http://www.shoji-elc.co.jp/index.html