エスエージーバルーンズ株式会社事業内容:バルーンの製造販売
従業員数:15名
所在地:東京都墨田区東駒形1-9-11

右から 専務取締役 矢部 佑太朗氏、製品管理部 望月 有希氏、営業部 渡部 涼氏

新たな市場を創る商品開発の必要性
「ユニークなバルーンメーカーであり続けたいですね」。会社のビジョンは何かという問いに、ひと呼吸あけて答えたのは、エスエージーバルーンズ株式会社の専務矢部佑太朗氏(以下矢部氏)だ。
1959年創業の当社は、高品質でデザイン性の高い、オリジナリティあふれるバルーンを企画・製造・販売している。クラレの高ガスバリアーフィルム「エバール」を世界で初めてバルーンに使用し、足付き風船「エアウォーカー」を進化させた「お散歩バルーン」は、累計1,000万枚以上販売する大ヒットとなり、世界中で販売されている。
これまで老舗バルーンメーカーとして成長を続けてきた当社だったが、例にたがわず2019年末からのコロナ禍の直撃を受けることになった。様々な業種でイベントが軒並み中止になり、集客向上に力を発揮していたバルーンの活躍の場がなくなって、当社の売り上げも低迷した。
「今まで持っていた市場の需要だけでは、こういう不測の事態が起きた時に脆弱だと気づきました。従来の市場だけでなく、新たな市場で売り上げを作ることのできる商品開発が必要だと感じました」と語るのは営業担当の渡部涼氏(以下渡部氏)。渡部氏が事業化チャレンジ道場のことを知ったのは、情報収集のために訪れた展示会でのこと。精密板金製造の企業が、道場参加をきっかけにキャンプ用品を開発・展示しており、同時にクラウドファンディングの目標達成も間近という実績を聞き、「あっ、これだ!」と思い、その場で参加の意思を固めたという。

営業部 渡部氏

道場は「未来への布石」を得た時間
実際に2021年春、事業化チャレンジ道場に参加したのは、営業部の渡部氏、商品開発を担う望月有希氏(以下望月氏)、そして専務の矢部氏の3人だった。
「今までの製品開発では、お客様の要望や社長のアイデアを形にすることが多かった。講師やデザイナーの意見を聞き、同じ志を持った仲間と意見交換をして、そこから新商品を開発するという新しいプロセスが、今後の役に立つと思いました」と矢部氏は当時を振り返る。
1年目の「売れる製品開発道場」では、ほぼ2週間に1回のペースで講義・演習がある。日々の業務をこなしながら、課題を整理し消化していくため「頭のスイッチの切り替え」が難しかったと話す渡部氏。「PEST」や「SWOT」、「3C」や「ペルソナ」など、これまで馴染みのなかった概念が、知識として腹落ちする前に次の回が来てしまい、「ついていくのが精一杯だった」時期もあった。しかし、その苦労の結果、身についたのが商品の「ベネフィット」を意識する習慣である。「開発におけるプロセス・段取り・中期目標といったマイルストーンを意識するようになり、お客様の要望にやみくもに応えるのとは違う作り方を学べたと思います」(渡部氏)。今では、道場への参加が「未来への布石だった」と思うようになったという。
一方、矢部氏も「私にとっては自社を見つめ直す機会になりました。場所を変える、人を変える、時間配分を変える、と新しいアイデアが浮かぶといいます。いつもの付き合いから少し離れて、別の業界の方々と話をするのは刺激になるし、アイデアがどんどん浮かびますね」と手応えを語る。

コンプレックスが強みに変わった瞬間
「売れる製品開発道場」で学んだことを社内に持ち帰り、各部署を横断する形でディスカッションし、その成果となったのが植物型の「インテリアバルーン」だ。だがこの新商品が生まれるまでの道のりはけっして平坦ではなかった。最初に考えたのは、膨らませる緩衝材で、これはレッドオーシャンの価格競争に巻き込まれる可能性があるということで早々に断念。バルーンをブックエンドとして使うというアイデアも出されたが、バルーンの特性である軽さが活かせていなかったため、このアイデアも見送られた。試行錯誤を繰り返すなか、ヒントになったのが矢部氏の「バルーンはギフトとの親和性がある」という思いだった。膨らます前はコンパクトで扱いやすいのがバルーンの特徴。ギフトとして受け取った人自身に膨らませて楽しんでもらうのはバルーンの本質を活かしていると考え、新商品は「ギフト」として贈ることのできるものに方向性が定まった。
「当社はわりと複雑な形状のバルーンを作ることができるので、シンプルなものではなく、チャレンジングなものでもいいんだろうなと、徐々に考えを進めていきました」(渡部氏)。
2年目の「事業化実践道場」に入ると、担当のPM(プロジェクトマネージャー)からのアドバイスを受け、さらに具体的な開発が進められた。
「風船は膨らますとシワができてしまう。これが少しおもちゃっぽいというか、いかにも風船ですみたいな感じになってしまう。それが、何かを模倣して作る時のコンプレックスにもなっていました」と語る渡部氏。
ギフトとしてプレゼントできる植物の形にしようと決まったときも、このコンプレックスが障壁になっていた。そんなときに、デザイナーから「木にも個体差があって伸び方も違うし、幹の生え際とかにも微妙な違いがあったりする。そういった植物の“ノイズ”が、風船のシワに似ているから、それを活かしましょう」とアドバイスを受ける。植物もバルーンも、ひとつとして同じ形のものがないという気づき。コンプレックスだったものが強みに変わった瞬間だった。試作品開発を担当していた望月氏の気持ちが軽くなったことは間違いない。
これを境に開発のスピードは速度を増すことになる。バルーンのシワが木の幹のように見えるデザインをし、その印刷にもこだわった。当初はバルーンで考えていた鉢部分も、ペーパークラフトのようにゆっくり折って組み立てる形状に落ち着いた。また「スポイトで水やりをするような感覚」で空気を入れて膨らまし、作る時間も楽しんでもらうため、専用の小型空気入れの開発も行った。
商品を入れるパッケージには、植物標本仕立ての説明を書き入れた。実際の植物の説明と合わせて空想植物としての説明も加えて、読んでクスッと笑ってもらうような工夫をこらしたという。そして誕生したのが『QooSo Plants® (クウソープランツ)』シリーズだった。
「一旦方向性が決まると、次から次にアイデアがすぐ出るんですよ。売上のことは一旦置いておいて(笑)。こうすればいけるんじゃないかという、目の前の課題を解決する力は社内のみんなに備わっている」(矢部氏)。
現社長のアイデアから生まれたヒット商品「お散歩バルーン」のレガシーは、皆でアイデアを出し合い商品化するという形で受け継がれているように見える。
「ギフトは非日常的なものですが、もらった人が非日常を1日だけで終わらすのではなく、毎日飾って見ていただける。そこまで辿り着けたのがすごく誇らしいと思っています」(矢部氏)。

道場で企画しシリーズ化した
新しい発想のインテリアバルーン
『QooSo Plants® (クウソープランツ)』

「植物の標本」をイメージし、
台座や空気入れも小さく収納して
ギフト用に郵送できるようにした

薄型軽量の空気入れもアイデアを
すぐ形にし特許化も図った

新商品から生まれるシナジー
こうした経緯を経て、新商品『QooSo Plants® (クウソープランツ)』は2023年7月に正式リリースとなるが、当社は同時期に、イベントのような非日常でなく、普段の生活に寄り添うようなバルーンとして、過去に製品化した「ORIZURU(折鶴)」や「KINGYO(金魚)」なども改良し“リブランディング”を行っていた。そうした製品と一緒に「インテリアバルーン」というカテゴリーで営業活動や展示会出展を行い、徐々に大手の雑貨店にも納品できるようになっていった。また、既存の取引先とのつながりから、ミュージアムショップや植物を置くセレクトショップなど、新たな販売ルートも地道に開拓していった。
「多角化というか、既存の商品を新しい市場に入れたり、新しい商品を既存の市場に入れたり。クロスで販路を拡大したいと思っています。武器があるからこそ行ける市場がある。シナジーがあると伸ばしやすいですよね」と語る矢部氏。当社には、新しいものを取り入れる柔らかい社風があり、スピードという長所があり、トライしやすい環境、成長できる若手社員がいると自負している。それを新商品という形で具現化するきっかけとなったのが事業化チャレンジ道場だったといえるのではないだろうか。
創業から66年、「バルーンを通じて、あらゆる世代の人々に楽しさと華やかさを提供する」ことを経営理念としてきた当社。そのために必要なのは、面白いこと、新しいことをやっている会社と市場に期待され続けること。「ユニークなバルーンメーカーであり続けたい」という思いと一致する。

専務取締役 矢部氏

生活に身近な”インテリアバルーン”の
新ジャンルを開拓中

部屋に入った瞬間、手に取ってみたくなる商品がたくさん並んでいて、一瞬で童心に返りました。インタビュー最中、『QooSo Plants® (クウソープランツ)』の一番人気商品「クウキガジュマル」に実際に空気を入れさせてもらいました。皆さん、本当に楽しそうに説明をしてくれて、この商品への熱い想いを感じました。「売上だけではない、内容のある成長を求めるなら、道場の門をたたいてチャレンジしてほしいです」と事業化チャレンジ道場への参加を考えている皆さんへの熱いメッセージをいただきました。(2025年11月取材)
文章/池田 雄悟
撮影/堀内 まさひろ
会社概要
| 参加者名 | 専務取締役 矢部 佑太朗氏 営業部 渡部 涼氏 製品管理部 望月 有希氏 |
|---|---|
| 経営者の参加 | あり |
| 資本金 | 1000万円 |
| TEL | 03-3624-2641 |
| FAX | 03-3624-4702 |
| URL | https://www.sagballoons.com/ |



